勝ち続ける人生

こんにちは、今井です。

本日はフィクションです。
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外回りの昼時、中華料理屋に入った。
カウンターには数名の男が座っている。

注文したラーメンが運ばれてきて、
食べようとしたとき、声が聞こえた。

「先に食べた方が勝ち」


横の男はちらっと私を見たかと思うと、
全力でラーメンを食べ始めた。

気のせいかと思って私も食べ始めた。

また声が聞こえた。

「負けちゃうぞ」


気にしないつもりでも、
自然に食べるスピードが速くなる。

必死に麺を飲み込んで、
間一髪、隣の男より先にスープを
飲み干した。


「勝った」

と思ったが、隣の男は何もなかった
かのようにスマホを見ている。


やっぱり気のせいに違いない。

慌てて食べたせいで、
どんな味だったか覚えていない。


食べ過ぎてお腹が苦しい。
普段なら残す量だ。





次の客先までもうすこし時間がある。

そろそろ靴を買い替えたいと思ったので、
駅前の百貨店に入った。

とりあえず見るだけにしよう。


靴売り場にはサラリーマン風の
男性客が数人いた。

歩きやすいものが良いので、
ゴム底の靴を物色していると、
また声が聞こえた。

「高い靴を買った方が勝ち」


あきらかにはっきりした声が聞こえた。

この中の誰が言ったのだろう。

挑発になど乗るものか。



2つぐらいに候補を絞ったところで、
また声が聞こえた。

「安い靴だとお前の負けだぞ」



別の男性客が私の靴を見て
ニヤッと笑った。

バカにしやがってと思ったが、
値札を見たら急に安物に思えてきた。


奥の棚にはもう少し高級な靴が
ずらっと並んでいる。

見るだけ見ようと思って手を取った。

さすがに見た目は美しい。
値段は10倍も20倍も違う。

「これならオレの勝ちだな」

と思った。




レジで手続きをしていると、
その場にいたお客たちはいつの間にか
いなくなっていた。

百貨店の袋が片腕を重くした。
まだ2件回るのに、、、。

ヤレヤレ。


高級な靴は見た目は良いが、
靴底の革なんて誰も見ない。

雨が降ったらすぐに染みてくるのに。




改札を入ると、また声が聞こえた。

「先に階段を上り切った方が勝ち」


私は駆け足で階段を上り切った。
電車は行ったばかりだった。




ニュースアプリを見ていると、

「論破したほうが勝ち」

とバナー表示されていた。


コメントで1人のユーザーとやりあって、
なんとか論破して勝った。

気が付くと2時間を使っていた。

ふと見るとバナーが消えていた。



「遅くまで起きてた方の勝ち」

「マンションは階数が高い方が勝ち」

「旅行に行った回数の多い方が勝ち」


他にも、いろんな声が聞こえてきた。

今のところ勝ち続けている。



声が聞こえると私は安心する。

自分が何をすればいいのかが
分かるからだ。

(おしまい)


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