りんご師の子弟

20150923-1

こんにちは、今井です。

 今日は物語を一つ。

りんご師の子弟のお話です。

 

「りんご師」とは、お客様一人ひとりに
あったりんごを選ぶ仕事。

100個、1,000個の中からでも、
ぴったりの1個を選びます。

ある日、親方が弟子に言いました。

「鶴野さんのりんごを選ぶのだが、
別件があるので、やっておいてくれ」

弟子は木箱に入っている膨大なりんごを
1つずつ見て行きました。

「鶴野さんに合うりんごは・・・」

到底分かりませんでした。

弟子はガッカリしました。

 

親方が帰ってきてから、
そのことを報告しました。

 

親方はヒゲをなでながらニヤリとして、
こう言いました。

「この箱には100個のりんごがある。
ぴったりのりんごが分からなくとも、
これは違う、というのはあるだろう」

たしかに、傷がついたりんごや、
形の悪いものはありました。

さっそくそれらを取りのぞくと、
りんごは半分の50個に減っていました。

「これでわしの仕事が半分減った」
と、親方は言いました。

弟子は、「自分にはなにもできない」と
思いこんでいましたが、

親方の仕事を半分に減らす事ができて
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
嬉しく思いました。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

そして、親方はそこから10個を選んで、
それらを選んだ基準を教えてくれました。

よく見ないと分からないのですが、
言われてみれば、良さそうだと、
弟子も思いました。

そして、親方はそこから1つを選びました。
最後の1つは、親方にも説明できません。

その日から、弟子が半分のりんごを
より分けるのが仕事になりました。

親方が1日に選べるりんごの数が増えて、
売上も上がって来ました。

 

そのうち、、、

弟子の目利きもだんだんと良くなって、
最後の10個が選べるようになってきました。

その頃には、弟子も増えてきて、
合計で10人になっていました。

 

親方は、10個の中から1つを選べば
良いだけになり、さらに仕事をこなせる
ようになってきました。

待っていたお客様にも届けることができ、
多くの人に喜んでもらいました。

 

ただ、まだ選び方を間違う弟子もいて、
その時はやり直しでした。

「鶴野さんのを選ぶときはそれで良いが、
亀山さんに合うのはそうじゃない」

こう指摘された時、弟子達は、
りんご選びにおける深い思想について
すこしずつ学んで行きました。

誰にでも同じ対応をしていて、
自分たちが「バカの一つ覚え」だったと、
反省しました。

表面的なことではなく、
なぜ、この場合はこの対応なのかを
考えるようになって行きました。

そのうち、一番弟子は、最後の3つまで
絞り込めるようになりました。

他の弟子達が10個に絞り、
それを一番弟子が3個まで絞る事で、
さらに親方の仕事が減って、
届けられるりんごが増えました。

 

たまに親方がきまぐれで、100個のりんごを
より分けようとすると弟子達が止めました。

「親方は、最後の1つだけをしていて下さい。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仕事が止まってしまいます。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
その仕事はわれわれにも出来ます」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

親方はしぶしぶ自分の持ち場に戻りました。

 

そのうち、最初の50個を選ぶために、
アルバイトを雇うことになりました。

ルールを決めれば誰でも選べることが
分かったからです。

しかし、10個に絞り込むルールは、
なかなか言語化できません。

ましてや、1つに絞り込むときの理由は、
親方にもどうしても説明できませんでした。

 

ある日のこと、、、

鳥山さんと犬岡さんのことで、
弟子たちが揉めていました。

親方が選んだりんごが両方に合うため、
どちらに渡すか議論になっていたのです。

購入額が鳥山さんの方が多いため、
多くの弟子は鳥山さんに渡すべきだと
考えていました。

 

しかし、鳥山さんは弟子たちには冷たく、
評判が良くありませんでした。

そこで、親方は、そのりんごを犬岡さんに
持って行く事にしました。

「親方、それで良いんですか?
売上が減るかも知れませんよ」

と、多くの弟子が言いました。

「しかし、長い目で見たら、犬岡さんだな。
こういうのを経営判断というんだ」

と親方は言いました。

 

いくらでも続けられそうですが、
このへんで。

 

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